すぐるホームページ > きしも.com > 数学 > 「ゲーデルは何を証明したか」p27の証明

「ゲーデルは何を証明したか」 p27の証明

ずーっと気になっていた,以下の仮定から,p27の「Kはちょうど3つの元をふくむ」ことの納得いく証明を考えたので,以下に表します。

仮定

1.Kの任意の2つの元は,Lのちょうどひとつの元にふくまれている。
2.Kのひとつの元が,Lの3つ以上の元にふくまれることはない。
3.Kのすべての元が,Lのただひとつの元にふくまれることはない。
4.Lの任意の2つの元は,Kの元をちょうどひとつふくむ。
5.Lの中には,Kの元を3つ以上ふくむような元はない。

定理 Kはちょうど3つの元をふくむ。

証明

 Kには2つ以上の元があります。なぜなら,
「1.Kの任意の2つの元は,Lのちょうどひとつの元にふくまれている。」のですから,Kから任意に2つの元を取り出すことができるので,Kには2つ以上の元があることになります。

ところが,「Kに元が2つだけある」と仮定すると,以下の通り矛盾が起こります。

Kに元が2つだけある場合
「1.Kの任意の2つの元は,Lのちょうどひとつの元にふくまれている。」のですから,Kの元はすべて,Lのちょうどひとつの元にふくまれていることになります。
しかし,
「3.Kのすべての元が,Lのただひとつの元にふくまれることはない。」のですから,矛盾します。
矛盾の原因は,Kに元が2つだけあるとしたからです。
よって,Kに元が2つだけあるわけではありません。


これで,Kには3つ以上の元があることがわかりました。

そこで,Kの元の中から任意に3つを取り出し,k1,k2,k3 とします。
「1.Kの任意の2つの元は,Lのちょうどひとつの元にふくまれている。」のですから,k1 も k2 もふくむ,Lのちょうどひとつの元が存在します。
その元を p とすると,k1 も k2 も p にふくまれていることになります。
このとき,k3 は p にふくまれません。なぜなら,もし k3 も p にふくまれたとすると,p は k1,k2,k3 の3つのKの元をふくむことになり,
「5.Lの中には,Kの元を3つ以上ふくむような元はない。」ことに矛盾するからです。
ところで,「1.Kの任意の2つの元は,Lのちょうどひとつの元にふくまれている。」のですから,k1 も k3 もふくむ,Lのちょうどひとつの元が存在します。
その元は p ではないので,k1 も k3 もふくむLの元を,q とします。

同じように,k2 も k3 もふくむLの元を,r とします。

つまり,以下のようになっています。これは,仮定1〜5を満たしていることを各自確認してみましょう。

 k1 も k2 も p にふくまれている。
 k1 も k3 も q にふくまれている。
 k2 も k3 も r にふくまれている。

 さて,ここでKに4つ目の元である k4 があったとします。すると,
「1.Kの任意の2つの元は,Lのちょうどひとつの元にふくまれている。」のですから,たとえば k1 と k4 の2つの元をふくむ,Lの元があるはずです。
ところが k1 も k4 も p にふくまれているとすれば,p は k1 も k2 も k4 もふくむことになり,
「5.Lの中には,Kの元を3つ以上ふくむような元はない。」に矛盾します。

よって,k1 も k4 も p にふくまれることはありません。
同じようにして,k1 も k4 も q にふくまれることもありえず,r にふくまれることもありません。

よって k1 も k4 もふくむLの元は,p, q, r とは違う元ですから,それを s とします。

ここで,k1 に注目してみましょう。
k1 は p にふくまれ,q にもふくまれ,s にもふくまれています。ところが,
「5.Lの中には,Kの元を3つ以上ふくむような元はない。」のですから,矛盾しています。

矛盾の原因は,Kに4つ目の元であるとしたところにあります。

よってKには4つ目の元はなく,Kはちょうど3つの元をふくむことが証明されました。