都教委都立中学入試要項を公表
東京都教育委員会は3月18日,2005年4月開校の台東地区,中高一貫6年制学校の入試要項および今後開校予定の都立中学全体の入試要綱を公表した。
入試は大きく2つに分かれ,特別枠と一般枠の2種を設定。特別枠は台東地区都立中学の場合,算数・国語・英語のいずれかの教科の卓越した能力がある者を選ぶA入試と,日本の伝統文化(囲碁・将棋・邦楽・邦舞・演劇)にたくみな者を選ぶB入試とがある。このAとBの特別枠の総枠は16人で,一応Aを10人,Bを6人としているが卓抜な能力が多い場合は,総枠で16人を超えなければAであれBであれ想定枠にこだわらない意向という。この時別枠入試は2月1日とし,合格発表は2月2日,同手続きは2日中としている。いわば第一志望者を対象とするAO入試のような性格である。
また。一般入試は2月3日に行い,既に公表している適性検査という名前のペーパーテストを45分ずつ2種類行い,後に面接。この適性テストは総合形式で意欲や思考力・表現力を見るとしており,モデル問題を見ると記述答案も多い。また,正解が1つとは限らない設問形式のため採点作業に時間がかかる(合格発表は9日としている)。
さて,出願の際に報告書(調査書)などを添付することになっており,あまりに応募者が多い場合は,事前に書類審査をして5倍までに選抜するという。その通知は28日に到着するらしい。従って,仮に書類審査に落ちていると判明してから2月1日や2月3日の私立中学に出願しようとしても,既に締め切っている私学も少なくない。その意味では都立中と私立中の二股出願をする人も少なくない可能性がある。
その書類選考は,報告書を点数化していて300点満点でその一人一人の成績評価を換算するルールもあわせて公表している。それによれば小学校での絶対評価の観点別評価の換算値が示されており,小学校で総合的に優秀でなければやはり倍率が厳しい場合は振り落とされよう。
つまり,私立中とこの点で選抜の発想が大きく異なる。この点というのは,小学校での評価を不問としているのが現行の私立中選抜の実際だからだ。こうした選抜方法では上位層は都立中学を受験しないのではなかろうか。
もう一つ,大きく異なるのは既に公表されているように,適性テストの発想であって選抜テストの発想ではないこと。1つの解答ではなく様々な解答が予想できるため選抜人数が少なければ少ない程,相当に才能豊かな生徒が選抜できようが,上位受験層にとっては日頃の受験勉強の成果を期待できない面も強く,敬遠される可能性もまた強い。
さて,入試要項を見て受験生にとっての一番のデメリットは,一般入試枠の合格発表が2月9日と相当に遅いことだ。特にこれは私立中学受験とのかけもち組にとって決定的に遅い。
しかし,昨今のことだから両方に合格しながら態度を決めかねる親もいるはずで,私立中の手続日が2月10日までで,その後に繰り上げ合格などが出されれば暫く他にも影響が出よう。もっとも,ここまで発表が遅ければ私立に手続きせざるを得ず,私立へのこの面での影響は少ないと見る見方もできる。逆に手続きを2月中下旬まで待つ場合は都立中学にもって行かれやすくなろう。
また,そのように両方合格して都立中学に進学を決めた場合,私立中学側が2月8日以前に手続きをさせていたとすると,入学金など一度は納付したものを返還させるかさせないかという問題も生ずる。
都立中学第一志望者で私立中学進学も併願する,という層がどのレベルになるかでこうした影響を考慮しなくてはならないところも,私立中の中には出てこよう。ここはあくまでも力関係であり都立中受験層を少しでも受け入れ,あわよくば受験生を増やしたい私立中は10日まで学納金納付を待つだろうが,それがそのまま都立中学に逃げられる方に作用する中堅校となると,そうもいかない。
このあたりがまことに読みにくい。しかし,ともかく9日まで待たせるという都立中の入試要綱それ自体が浮世ばなれを感じさせる。
公立中高一貫校,京都・和歌山の異変?
都立中学の行方を占う上で注目すべき公立の中高一貫校の募集が,京都と和歌山といういずれも私立中学受験のさかんな地域で今春行われ,いずれも10倍以上の高倍率になったことが注目されている。
そして,それはそのまま私立中学に大きな影響を与えたのは事実だが,では受験者数,合格者数,入学者数にどう影響したか,というとこれが案外つかめないのだ,という。
確かに公立中高一貴校自体の人気は高かったが,それでもって私立の受験生がそれほど減ったということはなく,今のところさしたる影響がない,という現地の声をきいた。もっとも4月の入学者を見てみないとフタをあけたら入学予定者が実際は入学してこなかった,ということがあるかもしれない。今春,現に首都圏の私立中学でも,2校に手続きをしておいて,最後の3月中旬になって一方をとりやめる旨連絡をした保護者がいたらしい。もはや補欠繰り上げはしない旨,宣言した後だから学校側もどうすることもできないし,繰り上げを待っている方にも迷惑をかけてしまうことが想像できないのだろうか。しかし,こうしたこともある時代だから京都や和歌山にも同様のことがないとはいいきれまい。一方は多額の入学金がいるが,一方はなにしろ公立なので手続き自体に大した費用はかからない。私立2校の場合よりはるかにかけもちしやすいためだ。
ただ,もし現時点の観察があたっていれば,もともと公立高進学受験者の一部が,公立中高一貴校に志願しただけで,私立中進学を考えた児童・保護者の中に公立中高一貫校に行かせよう,と考えた方はほとんどいなかった,ということになる。
もちろん,そうはいっても東京は東京なりの事情があり,京都・和歌山と異なることもありうるが非常に興味深い事例ではある。
CKTレポート 2004 volume.1
関連サイト 東京教育委員会 都立高校改革
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/pickup/p_gakko/kaikaku.html
[コメント]
当塾の1月入会説明会でも,質問されました。都立の中高一貫校については,期待を持つ方がいらっしゃるようです。費用という観点から,見ると魅力的ですが,入りやすいかというと,決してそうではなく,参考問題を見てもかなりの記述力を要するもので,武蔵・麻布という入試問題を連想したくらいです。
選抜制度(上記レポートでは,選抜という名称ではなく適正テストと書いている)も,長年の私立・国立中受験のパターンから大きく外れているため,波乱要因にはなっても,一部でしかないような気がする。第一志望には,なりにくい(しにくい)と思う。
また逆に,学校数が増える年には,(選抜制度がかわらないすると)大きな波乱要因となるだろう。私学が,1月中選抜へと入試解禁日を前倒しする可能性も否定できない。
塾の指導は,今まで通り「反ゆとり」「基礎・基本から応用発展へ」です。その延長上のバリエーションの一つとして,都立中高一貫校選抜があるのだと思います。
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