全体として今年の入試問題は新傾向に乏しく,おとなしいという印象を受けます。
新学習指導要領の施行後数年たち,その影響もあるのか,算数では与えられた条件を組み立てていつて解答を導き出すような,事前の知識に依存しない問題の出題が目につきました。国語では記述解答を求めるものが増えこそすれ減少する兆しがありません。また,社会や理科は時事的な材料が一定の割合で出て,改めてその存在感を示しました。
このようにみてみると,やはり国語の記述力を強化していくことや思考力を問う算数の問題に強くなること,さらには理科や社会で学習することが身の回りでどのように観察できるか,というこの数年の入試問題の方向性が改めて確認できたと思います。
ですから,今まで学習してきたことに何か新しいことをつけ加える必要はなく,日々の研修がものをいうことでしょう。
むしろ大きな変化は,2科4科入試併設校で4科生の増加が著しいところが多く,2科受験の場合は高倍率になるきらいはありましたが,それが今年は極端なまでに高い倍率になったことは注目されてよいでしょう。つまり,このことから来年の2科4科入試併設校は,一部を除けば4科入試のみに切りかえる学校が多くなるか,もしそうでない場合でも事実上それに近い状況になると考えられます。
もう一つ見逃せない点は受験生の増加で,倍率が約1倍程度高くなってしまった学校が何といっても平均的な難度の学校に共通して見ることができるということです。これは,まさに1点のところに 何人も,いや何十人もいて倍率が高くなるということは,合格点が何点かせり上がり,いつもならある程度のところで収まる合格点が例年になく高くなったということです。
こうしたことから,ある程度のところまでいくと解く力はなかなか伸びにくいものですが,解く力の大きさは実は余り差がなくて,いかに間違わないで解ける問題を解き抜くかが勝負だということに気づかされます。ともかくミスをしないで実力を出しきることがさらに重要になった,といえます。
ただし,6年生の1学期中は新しい学習単元もあり,やはり解く力を大きくする努力が必要であることはいうまでもありません。
また 倍率が高くなったということで改めて考えてみないといけないことは4科のバランスです。ともすれば学科間で難しさ易しさの差が出題にあらわれますから,そのことと解く方の得意不得意の相性で得点は大きな開きが出てきます。こうした意味で相性のよい入試問題となるべく当るようにすること,4科で合計点が少しでも高くなるような得点作戦をたてる,そうしたことが大切になります。
[コメント]
事前の知識に依存しないとはいえ、それが公式レベルのものの場合は、知っているといないのとではスピード・正確さに大きな差が出てくるのは、当然である。つまり、出題する側から言えば、「与えられた条件を使い」の「条件」が教えないこととなってしまった内容である場合、問題の始めに書いておくことは出題の苦肉の策である。
公式レベル以外(以上と言うべきか)の場合は、いわゆる「その場で考える問題」となり、思考力が試されるものとなるので、注意が必要だ。一緒くたにして考えてはいけない。この文章では、後者の問題のことを言っているのです。
いずれにせよ、六年二学期に志望校の問題をしていれば、どのような力を求められているのかは、いやでも知らしめられることとなる。もちろん指導する側は別で、それ以前から各人の志望校とその傾向・相性を考えていくこととなる。
国語の記述力の必要性は、もう一昔前から(それ以上か?)言われ続けていることだが、それとは逆に国語力の低下は進行している。外山滋比古氏のいうように(『わが子に伝える「絶対語感」―頭の良い子に育てる日本語の話し方』飛鳥新社 )絶対語感とでも言う感覚の鈍さが、その後の指導を困難としている。感覚が、培われていればその後の指導で、改善するのも難しいことではない。
「解く力」と「ミスをしない力」と分けて論じているが、本来は渾然一体のものである。ただ、話の進め方としては、大変わかりやすい。『合否を決するのはミスをしない力』であることは、いうまでもない。偏差値的にある程度の難易度の学校を受験するであろ生徒では、(人により、学校により一題も許されないこともあろうが)算数2題は致命的である。配点から考えると、国語の選択式何題にあたるだろうか? 漢字の読み書きいくつだろうか? と、六年の終盤で意識付けができれば、ミスは減る。
4教科のバランスと作戦について、最後書いてるが、4教科の配点と得意・不得意の関係のこと。四科同じか100.の400点満点の場合と、算・国2科各100点で理・社が各70点の場合と、さらには50点の場合では、大きく異なる。
例えば、合計400点満点の場合最後は社・理で追い込んでいくが、理・社の比率が低い学校の場合は、そうはいかない。
最後に、大学受験では、「社・理は夏以降の追い込みで云々」と昔から言われているが、中学受験の場合は、それは無理。ある程度早い段階から、つくっておかなくては間に合わない。上記の例は、あくまでも合計で合格点をねらう場合の得点源としてということだ。