『AERA』の12月1日号(2003年11月22日発売)に,開成学園の加藤理事長が将来の寮制学校化について言及している。
これは直接には,都立中学とりわけ平成18年開校予定の小石川,あるいは両国の両校への対抗策という面とともに,さらなる少子化を見込んでブランドの維持をどうはかるか,という中長期計画として構想されたものだ。
この公表によって難関校に激震が起こるだろうが,寮の運営は高いコストがかかるため,開成のウリの一つであった低授業料というところに,どう影響するかも知りたいところだろう。
ただ首都圏の外縁部や,地方の集客を考えての寮設置であるため,直接影響をうけるのは地方の寮別学枚である可能性が強い。もつともレベルが相当高くなるのは必至の情勢だから,これまで地方の寮制学校に行っていた学力上位層を開成がもっていく可能性がある,ということだろう。
今いえることは募集定員のうち,通学制の人数を寮生の人数が増大するだけ制限することになり,これは必然的にそれだけ従来の通学生の合格粋が減ることになり,定員減と同じ効果を生むことになる。つまり難化は必至となる。
現在は,函館ラ・サールや鹿児島ラ・サールなどのように自然豊かな地方に寮制学校が多いが,逆に都心に寮をつくることで,地方から東京に優秀児を集めることができる。地方に住むものにとってこれは朗報だろう。
ただ,寮制枠については別の入試を課すのでなければ,よほどのことでないと合格しないので,それこそ都市の受験層なみの勉強をその地方でせねばならない。もしかしたら東京からの有名家庭教師派遣などという職業も生まれるやもしれない。
それはさておき,開成が今以上に難化すればどうなるか。すぐに言えるのは開成の東大合格者がさらに増える可能性があることだが,東京の受験生についていうなら従来なら合格できていた層が,他の麻布などに行くことになるからこれらの学校にとっても少なくない利益となる。つまり開成からはみだした分だけ,他の学校へトコロ天式に上位生が入っていくことになるからだ。一方,当の開成は地方の活の良い生徒を寮でしっかり鍛えるのでやりがいもあるだろう。塾や予備校に行く生徒はその分減ることになって,東大合格実績を武器に,御三家クラスをターゲットにしている塾にとってはダメージもあろう。しかし,学校の教育力の真価を問う意味では良い効果も期待できよう。
こう考えてくると開成の寮制学校化は首都圏の受験生や一部私学にとって,そう悪くない状況をもたらすともいえる。
これは前開成校長の伊豆山氏が,トヨタ・中部電力・JR東海が設立する全寮制の中高一貫校(愛知県)の校長に内定した人事の発表と,たまたま時期が一致した。少子化が進む中で,改めて全国レベルのエリート校の登場が注目される。
これによって短期的には地方の私学に悪い影響が出ることは否めない。
CKTレポート2003,11月号 volume.9
[コメント]
開成といえども,内部改革して定員確保,ステータスの維持を図ろうとする。逆にその危機意識を持たせた要因の一つが,都立の中高一貫校の誕生である(らしい)。もはや大昔とも言える時代の都立全盛期を思い出したのかもしれない。
しかし,(都立一貫校の)選抜制度・募集人員などからそのままでも被害は軽微と予測される。それでも,であるところが時代を感じさせる。
独自路線を行く武蔵は別として,それにつづく駒東・巣鴨・城北などは,どのように対策を講じるのだろうか。今後の動向が注目される。
寮制の学校は,親元を離れることから今ひとつ躊躇されるが,ステータス校となれば話は別だろう。
ホームへ